暴行

シネマヴェーラアイダ・ルピノ監督の「暴行」という映画を観てきた。1950年の映画だったけど、今の日本映画業界における性被害問題が頭をよぎってしまう作品だった。70年代近く昔の作品にも現在進行で問題とされる題材が扱われていて、本質的な人間の変化の難しさと情けなさと悲しさが現在地点から見てそこにあった。

この映画の主人公アンは仕事帰りに不審な男性につけられ強姦にあってしまう。彼女はその事件により精神的な問題に苛まれ、その後仕事に復帰するも妄想か現実かわからない周りの噂話などに苦しみ、婚約していた恋人にもきつくあたり、リベラルであろう家族の協力もごばんでしまい一人LAに逃げる。LAに向かう道中、色々問題があり助けてくれた牧師の男性と親しくなり、彼の住んでいる土地に居着く。この映画の中の主人公アンはずっと逃げている。序盤15分の彼女が不審者から逃亡するスリリングなシーンは前半の陽気な音楽から何も音のしない静寂へと移り変わり、映画がグッと引き締まるとても印象的な場面だった。正直この映画は、彼女が被害に遭うまでが映画展開のほぼ全てと言っていいと思った。ここで映画はある意味の終わりである。けど彼女にとっては全く終わらない。終わらない苦しみややり場のなさ、周りの人間に対する疑心暗鬼からずっと逃げ続けている。いわば精神的逃亡の映画だった。展開で言うと救済のような描写もあったけどおそらくこの映画の本質やオチはここじゃないように感じた。

この映画が作られて70年たった今でさえ最近の問題のように捉えられてしまうこのモヤモヤを考えながら渋谷をトボトボ歩いて帰った。

Outrage - Ida Lupino (1950) - YouTube

 

最近ネットで読んだ性暴力裁判の記事が深く考えさせられたからリンクを貼っておく。

“性暴力”裁判 被害女性が語った15分のことば